蘇州は「美味しい」、ここには土地の豊富な四季折々の物産があり、人々は「旬のものを味わう」というこだわりある食理念を育んできました。麺料理やお菓子、蘇帮菜(蘇州料理)、コーヒー・お茶などの飲み物、そして世界各地のグルメに至るまで、蘇州では季節ごとに異なるグルメを楽しむ事ができます。
蘇式麺(蘇州風麺):
蘇州の人々の朝は伝統的に一杯の麺を食べることから始まります。麺をすすり、お茶を飲み、評弾を聞くことは、現地の人々の生活に深く溶け込んでいるのです。麺に対する細かいこだわりを持つ蘇州の人々は、麺そのものからスープ、澆頭(麺にかける具)に至るまで、そのすべてに工夫が欠かせません。
(1)定番の澆頭(具):燜肉、爆魚、大排、素什錦など
蘇式麺は麺とスープだけでもすでに十分美味しいのですが、それをバラエティ豊かな澆頭(具)がより魅力的に彩ります。燜肉(豚肉の角煮)、爆魚(草魚の燻製)、大排(スペアリブ)、素什錦(五目炒め)など、どの澆頭(具)も心を込めて丹念に調理された、地元らしさ溢れる定番の蘇州の味です。
(2)楓鎮大肉麺
蘇州の人々の夏には一杯の楓鎮大肉麺が欠かせません。タウナギの骨、豚肉からとった出汁、酒釀(もち米から醸造し、中に小豆などを入れた、甘酒のような飲み物)を一緒に煮て作られたスープに、細くて白い麺を泳がせたあと、ほどよい脂身がのった大きな肉を乗せると完成です。ほのかな酒の香りがして、暑い夏でも食欲をそそります。
(3)禿黄油麺
「禿黄油」とは、混じりっけなしの蟹味噌と蟹の精子を炒めて作った食材で、その美味しさに抗える人はいません。禿黄油麺は、その禿黄油と麺を和えたもので、「麺のエルメス」と呼ばれています。上海蟹(大閘蟹)は秋限定なので、禿黄油麺を味わうのに最適な時期も秋です。
(4)三蝦麺
「三蝦麺って、3種類のエビが入った麺?」。そう思ったあなた、名前に惑わされないでくださいね。ここで言う「三蝦」とは、エビの肉、エビの卵、エビのミソのことです。初夏は蘇州太湖籽蝦と呼ばれる抱卵したエビが旬を迎えます。水揚げされた新鮮な籽蝦から料理に使う部位を取り出して澆頭用に炒めて、お椀に盛った麺にかけると、三蝦麺の出来上がりです。味わう者を驚嘆させるこの一碗は、毎年6~8月の間しか食べられません。
糕団(お餅とお団子):
(1)青団子
清明節の前後に青団子を食べる習慣は、遠い昔から伝承されてきた蘇州の食習慣です。コスズメノチャヒキと呼ばれる草の汁を白玉粉に混ぜて作った生地で、小豆、バラ、ゴマなどの餡を包むと、青団子の完成です。出来立ては青々とした草の香りが漂い、一口頬張ると甘く柔らかく、口一杯に香りが満ちます。
(2)鮮肉月餅(豚肉餡月餅)
中秋節の前後になると、蘇州鮮肉月餅の屋台の前にはいつも長蛇の列ができます。いかに蘇州の人々が新鮮なもの好きか、ここからも見て取れますね。鮮肉月餅の美味しさは、まずそのカリカリの皮にあります。水と油を塗った生地を何度も練ることで、焼き上がった皮は一口齧るとぽろぽろとこぼれてしまうほど一層一層がはっきりと分かれています。新鮮な肉の餡も美味しさの一つです。適度な脂身と濃厚な肉汁が包まれていて、一口頬張ると新鮮で甘く、油っこくなく、とても美味です。
(3)挽肉餡団子
挽肉を炒めて餡にしたこの団子は初夏に発売され、9月に市場から姿を消す、夏が旬の蘇州団子です。挽肉、さいの目に切ったタケノコ、キクラゲ、キスゲ、エビなどの新鮮な餡が包まれており、一口噛むと汁がじゅっと溢れます。食感がみずみずしくて柔らかいのが特徴です。その場で作ってもらったあと、出来立てをすぐ食べるのが一番ですよ。
(4)桂花餻(桂花=木犀の花)
蘇州の市花である金木犀は、蘇州人が愛するデザートの食材でもあります。秋になると蘇州の街には桂花餻の香りが溢れます。丹精に作られた桂花餻は、金木犀の花の本来の純粋な香りそのままに、ほのかな甘みで涎を誘います。上等なお茶を一杯添えたら、もう言うことなしです。
蘇幫菜(蘇州の地元料理)
(1)碧螺蝦仁
手で剝いた川エビの肉と碧螺春茶(江蘇省産の緑茶)を合わせて調理した一品で、さっぱりとしたエビの味わいが甘いお茶の香りと交わった、本当に不思議な組み合わせです。
(2)陽澄湖大閘蟹(上海蟹)
秋の訪れとともに、蘇州の市にはまるまると太った美味しい上海蟹が出回るようになります。オスは肉厚で、メスは蟹味噌が美味しいです。シャンパンや白ワインを合わせたいなと思われるかもしれませんが、もし本場のやり方で味わいたいなら、やはり黄酒が一番でしょう。
(3)蓴菜銀魚羹
心に沁みる美味しさと清らかな香りが漂う、この蘇州の特色あるスープ料理は、滑らかなジュンサイと柔らかなシラウオ、そして真っ白な卵の白みが一つになり、目も口も楽しませてくれます。
(4)羊肉
蘇州の秋と冬は羊肉店が最も活気づく季節です。400年あまりの歴史を持つ蔵書羊肉は、多くの昔ながらの蘇州人が秋冬の滋養強壮のために食する門外不出の「薬方」です。蔵書羊肉の食べ方はたくさんあります。白焼羊肉(塩茹で)、紅焼羊肉(醤油煮)、それにいちばん栄養満点なのは、春雨や白菜を入れた羊肉鍋です。蘇州各地にはほかにも特徴ある羊肉料理があります。東山鎮の白切羊肉(羊肉を薄味で煮てスライスしたもの)、桃源鎮の紅焼羊肉(醤油煮)、太倉市の双鳳羊肉(切った羊肉にした味をつけてゆがいたもの)、常熟市の徐市羊湯(羊肉スープ)など、どれも歴史を受け継ぐ定番の味わいです。
(5)醤方(豚肉の味噌入り角煮)
冬になると、蘇州の人々は味わい濃厚な醤方を食べます。どのような醤方が合格と言えるかといえば、それは必ず脂身と赤身のバランスが適切な、新鮮な豚バラ肉を使ったものです。大きめに四角形に切った小ぶりな豚バラ肉を焼いたあと、火加減を複雑かつ自在に調節しながら煮込んで完成です。口に入れれば肉がほろっと崩れます。塩味のなかにも甘味があり、しっかりとした脂の旨みがありながらもくどさはありません。「香気と魂のこもった」この肉料理は、食する者を感嘆させる一品です。
(6)松鼠鱖魚
蘇幫菜の定番の一品松鼠鱖魚は、肉質がきめ細かく、滑らかで、酸味の中にも甘みが感じられる旨さは何度食べても飽きがきません。素材には新鮮な鱖魚(ケイギョ)を使います。背骨を取ったあと、身に菱形の飾り包丁を施すことで、油で揚げると、まるで可愛らしい松鼠(リス)のような形になります。そこに砂糖と酢で作ったソースをかけると、食欲がどんどん沸いてくる松鼠鱖魚の完成です。





